2014年12月9日(火)
襟裳岬まで車で5分(約2.5km)、岬のほぼ突端に位置する、短角王国 高橋ファーム「ファームイン守人(まぶりっと)」。
ファームイン守人 外観
宿名「ファームイン守人(まぶりっと)」の「守人」とは、放牧中の牛を管理する人という東北弁。そして、遠野文化の伝統を守る人も「まぶりっと」と呼ばれているそうです。
室内
その牧場に立つ一軒家「ファームイン守人(まぶりっと)」は、2~8名のグループで利用できる宿泊施設。1階がリビング、ダイニング、トイレ、バスルーム、2階の和室2部屋が宿泊スペースとなっています。
1階リビングルーム
2階和室
レストランのメニュー
レストランの営業は、09:00~17:00。17:00以降は予約制(冬季も営業しています)。ステーキセット、ハンバーグセット、牛丼、スープカレー、バーガーセットなど、いろいろ楽しめます(その他、ドリンク、ソフトクリーム等)。
焼肉小屋「短々(たんたん)」
夕食は、別棟の焼肉小屋「短々(たんたん)」で、高橋オーナーが自ら焼く「えりも短角牛」の焼き肉を思う存分堪能!
草原のヤギさん
建物の前の草原には、なんとも元気のいいヤギさん2匹(オス&メス)! 逞しいオスのヤギさんが、杭に頭突きをして遊んで(運動?)いました。
素晴らしい景色
南に襟裳の海を望み、東に日高山脈がそびえ立つ丘陵地。100haもの広大な牧草地で、70頭もの親子の「えりも短角牛」が春から初冬にかけて自然放牧されています。
夏季の晴れた日の朝食は、コンブ漁をする海岸まで車で移動し、襟裳の海に広がる円弧を描く水平線を前に、海の幸を味わいます。
えりも短角牛の守人・高橋祐之さん
短角王国の守人が、ファーム4代目の高橋祐之さん(56歳)。
高橋さんは牧場を経営しながら昆布漁をする半農半漁を営んでいらっしゃいます。夏の朝は5時、海へ船をだし、昆布の引き上げ操業を行います。浜では、砂利を敷き詰めた干場で、家族総出の手作業による天日干し作業が続きます。
180haの牧場
そのえりもの海を南に望みながら雄大に広がる牧場では、希少品種である「短角牛」が自然放牧でのびのびと育てられています。
自営の敷地と借りている町営放牧場を合わせて180haもの牧場では、牛たちが草を食べつくすと次の放牧地へと場所を移動する放牧が行われています。
「こぉ〜〜い来い来い来い!」という高橋さんの言葉が牧笛となって牛たちを誘導します。「牛たちは、次の移動場所わかっているかのように、私達の動きを察っして、しっかりとついてきますよ」と高橋さん。
ミネラルたっぷりの牧草で育つ
潮風が運ぶミネラルたっぷりの牧草をパクパク食べて、起伏の激しい牧場内を自由奔放に走り回って育つ牛さんたち。逞しくて野生のような牛さんは、筋肉隆々。艶々のブラウンヘヤーが馬のように綺麗でスマート。まん丸くて大きな目が、無邪気で無性に愛らしい。すべての牛さんに名前と番号がつけられています。
2月から4月に牛舎で自然分娩で生まれた仔牛は、お母さん牛とずっと一緒。母乳をいっぱい飲んで育つ甘えん坊の仔牛さんたちは、雪が溶け、草が生え始めた5月には放牧地へ。
栄養たっぷりの牧草を好きなだけ食べて、太陽の光を浴び、27か月かけて元気に成長していきます。「ぼくぁ~しあわせだなぁ~♡」とつぶやく牛さんたちの声が、風に乗って聞こえてくるようです。
成長してある程度の体格になると、牛舎へ移動。遺伝子組み替えをしていない穀物飼料(トウモロコシやふすま等)と自家製の牧草が与えられ、体重およそ600kg~700kgくらいまで成長します。
えりも町と短角牛
短角牛は、旧南部藩(岩手県)時代に、内陸と沿岸の物資輸送に使われていた南部牛に由来する牛。
1895年(明治28年)、えりも町に導入された短角牛は、漁業の不漁対策として、えりも町で生きる人々の厳しい生活を支えました。
1870年代(明治初期)、襟裳岬周辺に開拓団が入り、海岸林が燃料林利用のための伐採が進みました。
1920年代(昭和初期)、「襟裳砂漠」と呼ばれた程、草一本はえない砂漠化状態。風に吹き飛ばされた赤土が沿岸一面覆い、襟裳岬の海は赤い海と化しました。昆布は根腐れを起こし、漁業に大きな打撃を与えました。
1950年(昭和25年)、若い漁師達50家族が緑化に立ち上がります。一致団結して挑んだ、えりも緑化事業の壮絶なる戦いは、以後半世紀に及びました。その後、国の治山事業の取り組みが開始され、少しずつ緑を取り戻していきました。
1984年(昭和59年)、数十年ぶりに襟裳岬に「流氷」が押し寄せ、海岸沿いの赤砂を根こそぎ洗い流しました。翌年、良質のコンブが大量に採れるという、奇跡の復活がくりひろげられました。
襟裳岬周辺の陸域にはクロマツの緑が広がり、そして、かつての豊かな広葉樹の原生林を目指して、広葉樹の植林も進められています。
守りぬいていく「えりも短角牛」への熱い想い
こうした襟裳岬の深い歴史を背景に、代々受け継がれてきた半農半漁の生活をしっかりと守り続けていらっしゃる高橋さんご夫婦。これまでのご努力とご苦労は並大抵のものではなかったと思います。
そして世の中は、輸入自由化へと進み、海外から安価な牛肉が国内に流通。さらに、霜降りの柔らかい牛肉が求められるようになってきました。えりも町でも短角牛から霜降りの黒毛和牛に転換する畜産農家が増加。しかし、高橋さんは襟裳の自然の中で育ち、地域に根付いている短角牛の育成を守り抜いていくことを決意されました。
高橋ファームの活動
高橋さんは、BSE(牛海綿状脳症)問題の発生の年、安全で美味しい短角牛の素晴らしさを、より多くの人々に知ってもらおうと思い立ちます。
奥様・秀子さんと力を合わせ、2002年(平成14年)にファームイン「守人まぶりっと」、2003年(平成15年)に焼き肉小屋「短々(たんたん)」をオープン。宿泊、牛肉販売、レストランを営業。牛肉の精肉や加工品の販売は、独自に販売ルートを開拓し直接地方へ発送。
その他の農業実習体験として、農業高校や農業実習生の受け入れを行い、餌やり体験・牛舎の掃除体験・放牧の見学など、積極的に活動されています。高橋さんは、子どもたちに「命をいただく」ことの大切さ、感謝の心を伝えていらっしゃいます。
数々の受賞
高橋ご夫妻の地道な活動が高く評価され、
・わが町は美しくー北海道・地域特産物部門金賞(2011年2月16日)
・第8回コープさっぽろ農業賞・北海道知事賞(2011年11月11日)
・第3回北海道肉専用種枝共励会・最優秀賞(日本短角種の部・2013年11月7日)
など様々な賞を受賞されていらっしゃいます。
焼肉小屋で味わう極上肉「えりも短角牛」
「えりも短角牛」は、低脂肪で良質の赤身肉が特徴。肉の旨味成分であるグルタミン酸などが多く、牛肉本来の美味しさが味わえます。
待ちに待った夕食は、バーベキューハウスへ。牧場主高橋祐之さんが、自ら焼いて、最高の状態で最高級の「えりも短角牛」を提供! カルビ、サガリ、タン、ハツ、ミノ、レバー、ホルモン、昆布入ハンバーグ、ウインナー、すべて味付けは、塩&コショウのみ! こだわりのハンバーグは、低温殺菌の牛乳、放し飼いの自然卵、道産の無・低農薬のたまねぎ、天然酵母のパン粉、国産無・低農薬のトマトで作ったケチャップ入り。
えりも短角牛づくし
噛めば噛むほど、牛肉独特の旨味がジュワーッと広がります。サガリの脂がなんとも甘~い!すっきりとした旨味に誘われ、次から次へと食べても食べても、お腹の中へ入ってしまいます。美味しいごはんと野菜もセットされています。
「モォ~~~モォ~~~、美味しくてたまりませ~~~ん」。牛になってしまった気分です ♬ ホントに、ホントに ごちそうさまでした!!!
ウインナー & カルビ
柔らか〜いホルモン
カルビ
コンブ入りハンバーグ
循環型生産を守り抜いていく高橋ファーム
感動的なディナーのあとは、リビングで美味しいお酒を頂きながら、高橋さんご夫妻と一緒に、楽しいおしゃべりタイム ♬
「短角牛を放牧することは、健康的な土壌を作る。良質の土は、緑を育み、さらに海へ注がれ昆布に養分を与える。まさに農業が海を育て、水産が山を育てる循環型生産をこれからもずっと守っていきたいと考えています」と、きらりと目を輝かせながらお話くださった高橋さんのお言葉がとても印象的でした。
真心のこもった朝食・海の幸を味わう
えりもの海に昇る見事な朝陽を浴びながら頂く朝食は、奥様・秀子さんの真心のこもった手料理です。イクラ、昆布、鮭、お豆腐、お浸し、お味噌汁等、そして美味しいごはん! 磯の香りが漂ってくるようなお料理です。ごちそうさまでした!!!
えりもの町を愛する人々の熱意が伝わってきた感動的なひとときでした。存在する命のすべてが、お互いに与え与えられて循環し、守られていることに、喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。
極上の美味しさと素敵な時間を、ありがとうございました。
えりもの土と緑と海を、命をかけて守りぬいてきた人々の熱い想い。
偉大なる自然の中で育まれていく命の循環。
元気パワーが漲るえりも短角牛さんたちに限りない尊敬と感謝と祈りをこめて。。。
✧ noboru & ikuko
短角王国 高橋ファーム「ファームイン守人(まぶりっと)」
北海道幌泉郡えりも町えりも岬 406-1
Tel:01466-3-1129
【チェックイン/アウト】
・ 5月 ~ 9月 16:00 / 10:00
・10月 ~ 4月 14:00 / 10:00
【宿泊した部屋】 和室(2F)
【温泉/貸切風呂】無し / 家族風呂▶ 焼肉小屋「短々(たんたん)」
・09:00 ~ 17:00
・17:00 以降は予約制(冬季も営業しています)
・定休日:毎週火曜日【ホームページ】短角王国 高橋ファーム