2021年9月7日(火)
世界文化遺産登録・北海道縄文文化のバスツアーの旅「縄文旅 蝦夷コース」スケジュールをすべて完了。北海道中央バス(株)シィービーツアーズカンパニーの企画・主催バスツアーです。
札幌ターミナルへと向かうバスの中で、バスガイド・今堀匡佐子さんの世界文化遺産総まとめと縄文検定クイズ、そして縄文ナビゲーター・阿部明義先生(公益財団法人 北海道埋蔵文化センター 主査)の総括をいただきました。
バスガイド・今堀匡佐子さん総まとめ
バスガイド・今堀 匡佐子(いまほり まさこ)さんが作成された数多くのまとめから、一部をご紹介。
世界文化遺産総まとめ
土器
石器
工芸品
貝塚
石皿とすり石
国宝 中空土偶
キウス周堤墓群
「写真の中で、ここにいるのが私です」と指差す阿部先生。「ちなにみ、この発掘で知り合った私の妻は、前列にいます」と嬉しそうにお話された阿部先生です!
総まとめのお話の後に縄文検定クイズが行われ、解答者にプレゼントが贈呈されました!
阿部明義 先生のまとめのお話
・阿部明義氏:公益財団法人 北海道埋蔵文化センター 主査
世界文化遺産登録となった北海道・北東北の縄文遺跡群の特徴
北海道・北東北の縄文遺跡における縄文時代の位置づけを振り返ってみたいと思います。
農耕を伴わない定住生活
世界的には、打製石器から磨製石器が加わり、農耕が行われ、石器等の道具類が使われる食生活が要素が広がってきました。ところが、一万年以上続いた縄文時代は、新石器時代でありながら、農耕を伴わない定住生活を送っていたことが特徴となっています。
ところが日本では、農耕(稲作)を伴わない生活であり、海に出て魚をとり、山に入って木の実を採集し、鹿を捕まえるなど、海の恵み・山の幸を利用して暮らしていました。こうした生活は、移動することで可能になると考えられていましたが、縄文時代は定住生活。狩猟、漁労、採集を行い、しかも、これが1万年以上も続きました。この点が、世界的にも珍しい時代として、世界文化遺産の対象として認めらた要因になっています。
1万年に亘る文化の変遷
日本の縄文時代は、日本全国に存在していますが、なぜ、今回の世界文化遺産登録が、北海道・北東北の17か所となったのでしょうか。
北海道・北東北の縄文遺跡郡は、全体を通して、古い時代から新しい時代に至るまでの生活・文化の変遷を知ることができます。集落の様子から、精神文化・共同の祭事に至るまで、一連の流れを追っていくことができるのです。
北海道・北東北の縄文文化にはそうした流れが比較的多く存在します。
実のなる木(クリ・クルミ等)
縄文時代から弥生時代に入った時期も、北海道においては、弥生時代の農耕(稲作)の要素を取り入れませんでした。北海道では、「続縄文時代」として、海の恵み山の恵みをいただいてきた縄文時代の生活が継続されたのです。食生活を支えたものが、実のなる木(クリ・クルミ等)でした。
共同墓地や共同祭事
また、北海道・北東北においては、縄文時代晩期に、集落や貝塚だけでなく、共同墓地や共同祭事などがはっきりと残されていました。北東北中心のストーンサークル、北海道独特の周堤墓が存在しています。
縄文時代の6期間
縄文時代は、草創期、早期、前期、中期、後期、晩期に分かれます。北海道・北東北の縄文遺跡群では、定住の開始・発展・成熟に注目した6つのステージに区分。
定住開始:居住地の形成
生活集落が中心の時代で、最古の遺跡が青森県の大平山元遺跡(青森県外ヶ浜町)です。
集落の成立:居住域と墓域の分離
早期の9,000年程前、本格的に集落が営まれる様になったのが、垣ノ島遺跡(北海道函館市)です。
定住の発展:集落の施設が充実し、祭祀場的な捨場が形成
前期の遺跡は、北黄金貝塚(北海道伊達市)、田小屋貝塚(青森県つがる市)、二ッ森貝塚(青森県七戸町)などの集落群として見られます。
拠点集落の出現:集落の祭祀場が多様になる
中期で更に大規模になったのが、三内丸山遺跡(青森県青森市)。住居や集会所、建造物や大規模集落が残され、大勢の人々が一緒に共同生活をしていたことが示されています。
後期・定住の成熟:共同の祭祀場と墓地
さらに、共同で行う祈りの場が「ストーンサークル」で、その代表が大湯環状列石(秋田県鹿角市)、さらに伊勢堂岱遺跡(秋田県北秋田市)。
環状列石は、北海道では、「鷲ノ木遺跡」が祈りの場所としてのストーンサークルです。隣接して竪穴墓の共同墓地が存在しています。共同祭祀場と共同墓地が一緒になった場所として珍しい。
晩期:祭祀場と墓地の分離
祭祀や儀礼が充実し、共同墓地・共同祭祀が顕著になる。キウス周堤墓群は、共同の祈りの場所であり、集団墓地として大規模なものとなります。
晩期の大型環状列石として代表的な遺跡が、岩木山の麓にある、大森勝山遺跡(青森県弘前市)、是川石器時代遺跡(青森県八戸市)、亀ヶ岡石器時代遺跡(青森県つがる市)。北海道では、高砂遺跡(洞爺湖町)があります。大規模なストーンサークル(環状列石)、土偶など遺物が面々と受け継がれてきています。
余談:国宝・中空土偶(愛称:カックウ)は世界文化遺産に含まれていない
世界文化遺産の対象は、有形の不動産であり遺跡です。遺物である土偶は、世界文化遺産に含まれず、遺跡からの出土品は登録の対象外となっています。
中空土偶は、北海道函館市尾札部町(旧茅部郡南茅部町)の著保内野遺跡(ちょぼないのいせき)で見つかった土偶で、2007年に国宝に指定されました。中空土偶は、縄文文化の代表的な土偶として人気を博しています。
日本中に存在する縄文遺跡
私が中学時代、友人から地元で土器が発掘できるという話を聞き、地元の貝塚を自転車で走り回ったことがきっかけで、遺跡に興味を持ち始めました。貝塚から、何万年前の土器が手に取れるという感動がありました。
この二日間、世界文化遺産登録となった北海道縄文遺跡群を、皆さんと一緒に楽しく巡ることができたことを感謝いたします。ありがとうございました!!! と、お話された阿部先生です。
世界文化遺産登録となった北海道の縄文遺跡群を丁寧に巡り、その場の空気感を味わいながら、縄文文化をじっくりと楽しむことができた、最高の旅でした。
縄文文化の大いなる感動と素晴らしい旅に、限りない愛お感謝と祈りをこめて。。。
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