くらやみ祭展(ふるさと府中歴史館)綾部好男先生ギャラリートーク(大國魂神社例大祭)

2018年5月23日(水)

5月4日(金)14:00より、ふるさと府中歴史館(2011年リニューアルオープン)1階展示室において、綾部好男先生と府中郷土の森博物館・小野一之 館長によるギャラリートークが行われ、50名程の参加者が耳を傾けました。

ギャラリートーク & 展示会

ふるさと府中歴史館ではくらやみ祭期間中、「くらやみ祭の歴史と民族」と題する展示会が開催され、綾部先生の絵画が数点展示されています。

50人以上の入客数で大盛況!

祭道楽絵師・綾部好男 先生

綾部好男氏

綾部好男先生は、東京都府中市出身、77歳。東京藝術大学油画科油絵専攻(牛島憲之教室)卒業。1966年(昭和41年)から、グループ・プシケ展(資生堂ギャラリー、シロタ画廊・銀座)開催し現在も続けられています(2017年に50回目を開催)。

1967年(昭和42年)から、東京都府中市立府中第三中学校の美術教諭となり、以降、府中五中、一中、七中、二中にて定年まで指導。

1972年(昭和47年)頃、ウィーン美術大学他ヨーロッパにて研修。この頃より本格的にライフワークとして「くらやみ祭」を描きはじめる。

1989年(平成元年)、日本中国交流美術展大賞受賞(於:世田谷美術館)。

2003年(平成15年)~2011年(平成23年)、日韓国際絵画交流展(横浜市民ギャラリー、ソウルプレスセンターギャラリー)。

府中市ふるさと府中歴史館での「くらやみ祭」展は、2013年から毎年開催され、今年で6回目を迎える。

ギャラリートーク

第一部・「くらやみ祭を支える人々の歴史」
 府中郷土の森博物館・小野一之 館長

府中郷土の森博物館・小野一之 館長は、くらやみ祭の歴史と民族について、様々な調査研究に携わっていらっしゃいます。府中郷土の森博物館の特別展開催におけるブックレットが好評で、増版決定。

小野一之氏

府中の歴史文化を紐解くの3つのキーワードとして「国府」「宿場」「祭」があります。

「国府」は、1300年程前の国府・役所が置かれた事により、他の地域とは一味違う、長い歴史がスタート。その後、江戸時代に宿場町となります。今の府中の原型は宿場町にあります。

そして「くらやみ祭」は、歴史が古く、国府の祭りから始まっています。国府がなくなってからも、宿場町の人々が支え、今に至る大イベントになっています。このくらやみ祭を知ることによって、府中の歴史が見えてきます。

「くらやみ祭」は、1年に1度の大國魂神社例大祭で一番大きなお祭りです。この1週間続くお祭りには、目的があって、ストーリーがあります。

くらやみ祭とは神様の生まれ変わり・再生・蘇り=新しい1年の出発

くらやみ祭の目的・核心は「神輿渡御」。5月5日の夕方6時に、8基の神輿が神社を出発して、御旅所に向かいます。御旅所の中で、最も重要な神事(御旅所神事)が行われます。この神事は、神様が生まれ変わり、新しい力を付けて蘇ることを意味します。翌5月6日の朝4時に、神社に神輿が帰ってきます。

「くらやみ祭」の意味・目的は、神様たちの生まれ変わりであり、再生・蘇りであり、新しい力により新しい1年の出発点とすることです。

4月30日には「品川海上禊祓式」が行われます。神社神職一行、町の代表の方々が、品川から船に乗り海上にでて、海水を汲み禊を行い清めの海水を神社に持ち帰ります。かつて品川は海の玄関口であり、大きな港町であったことから、今に国府府中と港町品川の関係が引き継がれています。

5月3日夕刻、5月4日午後から、囃子、大太鼓、子供神輿などが、町内巡行し街全体が盛り上がります。夕刻には、6張の大太鼓が神社大鳥居の前に集まって太鼓の響宴が行われます。さらに、旧甲州街道とけやき並木を、22台の山車が、囃子を競演しながら巡回していきます。

5月5日本番の日は、神輿の渡御に先立ち、道すじを祓い清めます(道清めの儀)。

各宮の大太鼓が、各町内会から随神門内と拝殿前に送り込まれ、15時頃には太鼓打ち止めとなります。

神輿を揺すり揉んで暴れるのは、1年間の残りのエネルギーを全部放出し新しい力を受け取るため

夕刻6時に号砲が鳴り、大太鼓に導かれて、祭りのクライマックスである8基の「神輿渡御」が行われます。神様が本殿から神輿に移り、御旅所へと向かいます。

その時、神輿を揺すり揉んで暴れるのは、1年間の残りのエネルギーを全部放出し空っぽにして、御旅所に入っていただくためです。エネルギーをゼロにして、御旅所で新しい力を付けていただくための儀式なのです。

5月6日の早朝4時には、新たな力が誕生した神輿が御旅所を出発し、大太鼓に導かれ、町内を巡回しながら、神社に還御します。神輿の神霊を本殿に還し「鎮座祭」で祭りが終了となります。

府中のお正月は1月ではなく、5月だと言われています。神様の暦では、5月に生まれ変わり、5月から新しい1年がスタートします。

祭りを支える人々の歴史がそのまま、くらやみ祭の歴史でもあります。歴史が長いだけ、歴史の荒波にもまれてきました。その都度、祭りを支える人々の工夫と熱意と努力で今に至っています。まともと国府のお祭りだったので、国府がなくなった時点で、終わってもおかしくなかったのですが、1000年を超える今でも続けられています。

歴史の4区分について

長い歴史を「国府祭・総社祭としての始まり」「中世都市の祭礼へ」「近世宿場町の祭礼へ」「近世化・都市化のなかで」の4つに区分することができます。

国府祭・総社祭としての始まり

平安時代中頃、国府に総社が設置され、武蔵国府で総社六所宮が設立。武蔵の有力な祭神が祭祀されました。役人主催のお祭りでした。

中世都市の祭礼へ

鎌倉時代後期、国府が商工業都市として発展。商工業者が新しい街を作って経済的活気を帯びてきました。経済的効果を持つ祭りに発展していきました。「武州六所大明神も五月会の市を立たまふ」(五月の祭りに市場が開かれた)と古文書に記載されています。

近世宿場町の祭礼へ

江戸時代、府中は甲州街道の宿場町であり、六所宮の門前町として再生されます。この時のキーワードは、「見物人の登場」です。観光的波及効果をもたらします。

夜に神輿が出るという古くからある珍しい祭りとして知れ渡っていました。「くらやみ祭」は、真夜中に町中の灯りを全部消して神輿が出発しました。夜は神様の世界で、昼間は人間の世界。神事は、夜間人が見えないところで行われるのが本来の姿とされていました。

京都上賀茂神社で開催される「葵祭」では、神様が降り立つ神事は真夜中に行われます。奈良の春日大社若宮の御祭り(12月16日)は、真夜中に神様のお出ましを迎えます。真夜中に行われる神様のお祭りが、府中にて受け継がれています。

近世化・都市化のなかで

明治以降は、安全なお祭りへ志向されてきました。町内(四か町)が主体となり、競合しながら運営する新たな都市祭礼となりました。一方、ケンカ祭りと言われるようになり、度重なる暴動が続いたため、1960年(昭和35年)神輿渡御が中止となりました。

より盛大かつ安全な祭りへ向けて、祭りを支える人々の努力と工夫が続けられてきました。そこで、昼間開催となり、その後昼間行われていた神輿渡御が、2002年(平成14年)には午後6時からの開催となり、「くらやみ祭」が復活したのです。

歴史の変化について。。。

第二部・「いにしえを明日に伝える」祭道楽絵師・綾部好男先生

今後のくらやみ祭は、時代と共に、新しいくらやみ祭として変化していきます。新しい人々が府中に住み着いて、ベットタウンではなく、ホームタウンとして、自分の住む町をこよなく愛し、深く知り、誇りを持って、祭りを通して楽しんでほしいという想いをこめて祭りの絵を描いています。

小野館長のお話にあった、祭りを支える人々で、一番大変なのは神官の皆様です。

宮司さんはじめ、神職の方々は、4月30日に行われる「品川海上禊祓式」では、品川沖に出て、水のきれいな所を探して海水を汲みます。烏帽子・直垂を着用して海水で口をすすいで、禊を行います。この潮で清めた水で、食事をし、お風呂に入ります。

30日の夜は、弥生時代さながら、火を起こします。この火を絶やさないように煮炊きをします。4月30日から5月6日の朝10時頃、鎮座祭が終了するまで、鳥居からは一歩も出られません。こうした儀式が古式ゆかりの伝統として受け継がれています。

獅子についてのお話

私は小学校に上がるくらいから、囃子が好きでやっていました。当時、囃子は長男がやってはいけないものであり、道楽ものだと言われていました。小学校1年から中学2年まで、身体に染み付いていますので、時代が変わっても、リズムや踊りは覚えています。

囃子の伝承・形体について

田楽とは、藤原氏の平安時代から伝わる音楽と踊りから成る伝統芸能であり、田植え前に豊作を祈る田遊びとされていました(労務に苦しむ百姓たちの楽しみのひとつ)。

宇治平等院鳳凰堂阿弥陀如来坐像の後方の壁の極楽浄土を表す飛天の中に、長胴太鼓・締太鼓・篠笛があります。

宇治平等院鳳凰堂阿弥陀如来坐像の後の壁

今手にしているこの篠笛は、番場の長老が昭和32年に作った手作りの笛です。笛には長さの違いによって、4本調子・5本調子などの区別があります。

また、太鼓は、長胴太鼓と締太鼓。頭と尻と言われている2つの太鼓です。右側に長胴太鼓、左側に締太鼓が2つ置かれています。

手作りの篠笛

田楽のリズム・旋律が囃子として伝えられたと推測

田畑を耕し米を納める年貢制度の時代であったので、田畑を広げるために、田楽が盛んにおこなわれました。なぜ、衰退していったのか。北斎絵事典の挿絵にあるように、源氏三代、北条七代の最後の将軍(北条高時)が、田楽、闘犬、遊宴にふける「うつけ」と評されていました。

大塔宮・鎌倉宮の令旨により新田義貞、足利尊氏連合軍が、分倍河原の合戦で北条高時を破り、北条高時は自決し、鎌倉幕府が滅亡。源氏三代、北条七代の頃までは田楽が盛んで、その後、猿楽が御家人達に盛んになり、足利氏以降、庶民(農民)の間で、祝祭時の楽しみのひとつとして伝わった。

田楽のリズム・旋律だけが残り、囃子として伝えられたと推測されます。百姓たちには口伝えで伝わっていったとされます(口伝)。明治・大正になり、国府祭のつけ祭りとして、囃子が盛んに行われるようになりました。

府中囃子

府中囃子のリズムは2つ。「目黒流」と「船橋流」の二流派が伝えられています。二流派とも明治時代に伝わり、大正時代から例大祭で盛んに行われるようになりました。1964年に「府中囃子保存会」が設立され、熱心な指導により子供囃子が栄え、現在24支部ができています。「葛西囃子」は、江戸の祭礼囃子の源流となったものです。

鎌倉街道について

囃子の主な曲目

囃子の主な曲目は「屋台」「昇殿」「鎌倉」「四丁目」「国堅目」などがあります。

「屋台」は、「破矢」「しげ」「かわちげ」などの3つの曲で構成されています。おかめ・ひょっとこ等の馬鹿面を被った道化踊りの「にんば(仁羽、忍馬)」、獅子舞の「勇み」「清め」「じゃれ」等の曲目があります。

曲目について

「鎌倉」は、合戦の時に行う戦死者を弔う追悼曲なので、祭りでは奏しません。早朝4時頃から「朝っ囃子」として、青年たちがゆっくりと先人を偲んで叩きます。

囃子の楽器

楽器について

演奏する楽器は、長胴太鼓1つ、締太鼓2つ、後ろに「トンビ」という笛が置かれ、「四助」という鉦が付きます。叩くバチも太さが異なります。5人囃子が基本となります。

楽器について

踊り

「馬鹿面踊り」「寿獅子舞(天狐、白狐)」。江戸馬鹿(ひょっとこ、おかめ(お多福))、馬鹿面(大笑い、ベロ出しなど面形多数)。

踊りについて

「馬鹿面踊り」は、生きた喜び、嬉しさ、楽しさを表現し、軽やかに楽しそうに踊ります。

ひょっとこは、火男の変化したものであり、医学的には、顔面マヒの表情を表したお面(原因は、貧困で栄養失調、東北の気候的に寒さと冷え、精神的ショックなどによるものと考えられています)。

ひょっとこ

おかめは、卵型で、二重瞼、笑い顔でお多福と呼ばれ、仏像に関係があると言われています(法隆寺釈迦三尊像の口元は、微笑したアルカイックスマイル)。表情は、下を向くと悲しい顔、上を向くと嬉しい顔になります。

おかめ

五穀豊穣を願い、田の神様に実り多くの祈りをこめて踊る囃子は、大きく足を踏み出して、大地にしっかりと足をつけて踊ります。秋田のなまはげ、どじょうすくいなどに名残があります。

活動

活動は子供囃子(小学校1年生〜20才位まで)から始まり、卒業後に青年会に入り、様々な活動に参加します(山車、神輿、万灯大会、子供囃子の指導など)。40才にして青年会を卒業し、町内の役員として責任ある立場でリーダーシップを発揮していきます。

熱く語る綾部先生

「1年に1回の憂さ晴らしや楽しみとしての祭りを、新しい時代に合わせて、伝えていくために、地域で教えたり、自分でも楽しんで伝えています。

絵描きの年数よりも祭りに関わっている年数の方が長いくらいです。人は変われど、祭りを支えて行く人々を多く作っていきたいと思います。

描き続ける絵は、現場で感じたものを、身体全体で受け取り、感じるままに表現しています。踊り手、奏者、人の情、間、汗などは写真では伝わりにくいので、カメラは持ちません。

その場の空気の中で、その場で感じた情念を、そのまま描いていきます。見て書くので、歴史的な資料として残っていくと思います。楽しい、面白いという気持ちを50年以上持ち続けながら、道楽絵師として描き続けています」と、熱く語ってくださった綾部先生です。

熱心に聞き入る人々

先生の作品

くらやみ祭の歴史と囃子の魂が伝わって来るような、深いお話をありがとうございました。

太鼓の響宴、山車行列に続く。。。

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くらやみ祭(府中市)大國魂神社例大祭を50年間描き続ける綾部好男先生の熱い想いを取材(2018年5月17日)

くらやみ祭を描く祭道楽絵師 綾部好男
大國魂神社ホームページ
府中観光協会ホームページ

☆ noboru & ikuko

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