『あん』ドリアン助川 著(ポプラ社)

2013年4月17日(水)

『あん』ドリアン助川 著(ポプラ社)

線路沿いから一本路地を抜けた桜通りという商店街にある小さなどら焼き屋。

その店で一人鉄板に向かう主人公の千太郎。 バイトを求めてやってきたのは76歳の手が不自由な女性・吉井徳江。

徳江のつくる「あん」に感動した千太郎は、彼女を雇い入れ、様々な環境の変化が訪れる・・・ ☆

桜の季節にはじまり、桜の季節に終焉を迎える物語。 全体を取り巻く舞台には、常に桜の花の存在が、とても印象的です。

徳江が、ハンセン病と向き合ってきた60年もの歳月。 超えることの出来ない塀の内側の人生で、 自由に囲いを超えていく心をもって生きようとした徳江。

その世界が過酷であればあるほど、 「淡いピンクの桜の花」と「あんの優しい甘さ」が、 人々の心を柔らかく包み込んでいくように感じられます。

「言葉を持たないものたちの言葉に耳をすませ『聞く』こと・・・」 この事を生きる拠り所として生きてきた徳江。

「お前にみてほしかったんだよ。だから光っているんだよ」という月のささやき。。。 「よくがんばったな」という木の声。。。

生を終える最後の瞬間に、真実の声を実感し、 至福の喜びを心の底から味わう徳江。

人々は、日々の中で、 太陽の輝き、月の光、そよぐ風、清らかな水の流れ、木々や草花の匂いを感じた瞬間、 なぜか不思議な感覚が心を満たし、感動し癒されていくのは、 その時、生きとし生けるものの魂のささやきが聞こえていたかもしれません。

生きる気力を失いかけていた千太郎さんにとって、 こうした徳江さんの人生の生き様は、 まさに「生まれてきた意味・生きる意味」を物語るもの。

すべての人が、人生の中で一度は自分の心に問いかける「生きることの意味」。。。 その中に潜むキラっと光る秘密を、そっとささやいてくれるような物語です。

読み終えて、目に浮かんでくるシーンは、 桜茶が添えられた桜饅頭を、真剣な眼差しでつくる和菓子職人の千太郎さんの姿。 月の光に照らし出される、真っ白なブラウスを着た少女の面影・・・

「よくがんばったね ☆」 「大丈夫 ! 安心してね ♬」 「あなたことが大好きだからね ♡」 ・・・どこからともなく、そんな優しいささやきが あなたには、聞こえてきますか。。。

『あん』ドリアン助川 著(ポプラ社)

☆ noboru & ikuko

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